変電所建設の現場で、
私たちの存在価値を

PEOPLE 2

電力・原子力本部 
電力・エネルギー部

桜井 郁
Kaoru Sakurai

2022年入社

PROFILE
大学時代は日本史を専攻し、平安時代の歴史研究に取り組んだ。さらに、カナダへの交換留学も行い、多国籍な学生が集う寮生活を経験。コロナ禍に就活を行う中で当社に惹かれたのは、「どんな状況下であっても人の生活に必要とされる商材に関わりたい」という想いがあったからだった。特に機械商社であれば、販売後もメンテナンスや部品交換で継続的なやりとりが生まれると考えたという。また、若手社員から政府組織とも関わりを持ってEPC(設計・調達・建設)事業に携われる環境にも魅力を感じて、入社を決意した。
現在の仕事
現在は電力・エネルギー部に所属しており、後進国における変電所のEPC(設計・調達・建設)を行うJICA(国際協力機構)有償資金協力プロジェクトの取りまとめを主に担当しています。入札から完工までのプロセス全般を手がけており、共通の目的を持った組織体「コンソーシアム」のリーダーとして、変電所のEPCを滞りなく行うため、各企業や政府機関との調整を行うことが私たちの仕事です。国際的な案件に対応するため、JICAや日本のメーカー、海外のパートナー企業である土木業者や設計業者、コンサルティング会社などとの連携が欠かせません。案件の規模は数十億~数百億円単位のものであり、なおかつ日本の大手メーカーも参入する国際競争入札の場において、機器の細かなスペック要件などを分析して応札に挑むなど、非常に大きなやりがいを感じられる仕事です。

STORY01

「三国間の間に立つ」という責任

最も思い入れのあるプロジェクトは、カンボジアでの変電所建設案件です。このプロジェクトは、JICAによるODA(政府開発援助)の一環として始まったもので、現地の電力インフラの拡充を目的としていました。当時の私は入社1年目の冬。そのタイミングでプロジェクトの主担当に任命されたことには驚きを隠せませんでした。私の役割は、既に動き始めているプロジェクトの進捗を把握し、各関係者間の調整を行うこと。その中でも、日本・カンボジア・第三国のパートナー企業で構成されたコンソーシアムを取りまとめ、JICAや現地電力公社とも連携を図る必要があり、複雑なプロジェクト運営が求められました。まず課題としてあったのは、工事遅延の要因となる事項の洗い出しでした。道路が壊れる等の不測の事態で建設現場まで機械を運べない、運搬時の衝撃で通電しないなど、技術的・地理的なものを含めたあらゆるケースが遅延の要因となります。そうした遅延は違約金の発生につながるため、それらも踏まえた長期的な目線でのプロジェクトの進捗管理、関係者との契約交渉がコンソーシアムリーダーである私に求められていたのです。大きな責任のかかる仕事ではありましたが、入社時から「EPCに携わりたい」と自分で言っていたからこそ、最後までやり遂げたいという想いがありました。

STORY02

存在価値は、現場を突き詰めること

その課題を越えた先にあった、プロジェクトの最大のハードルは「自社の存在価値を示すこと」でした。建設が進んでいる間、土木作業や建設作業を行うパートナー企業の方々から、「あなたは何をするのですか?」とよく言われました。入札前であれば、市場調査や関係各所との交渉などを行うことで自社の価値を示せる一方で、実際に工事が始まると私たちはあくまで関係者間の調整を行うに過ぎず、その役割は見えづらいものになってしまいます。加えて私は入札後、履行が始まってからプロジェクトに参加しており、現場の方々は私に構うことなく工事を進めている状況でした。そこで私は現地に繰り返し足を運び、JICAや技術指導者の方々とコミュニケーションを密に取りました。現場での対話はもちろん英語。そうした意思疎通に齟齬が生まれやすい状況でも、相手の発言をよく確かめ、メールでわからなければ電話で、あるいは現地まで足を運んで対話する。技術についても不明点があれば、同じ部署のエンジニアに聞き、自分で図面まで見て確かめる。すべての状況と技術を網羅できるまで突き詰めること。とてもシンプルな方法ですが、そうして対話や知識を根気よく積み重ねていくことが、今後の技術的な懸念点を推測した上での工事運営の補完や、納期遅延による違約金をできる限り発生させないための予防策の立案、そして的確な発言によってコントラクターの立場を守ることなどを可能にし、結果として私たちの存在価値を示すことにつながっていくのです。

STORY03

商社が軸となり、プロジェクトが回り出す

プロジェクトに参加してから1年が経つ頃、パートナー企業のマネジャークラスのカンボジア人の一人から「あなたはプロジェクト担当として、さまざまなことを考え、プロジェクトをこんなに深く見ているのですね」と声をかけられました。それは、商社としての私たちの存在価値が認められた瞬間のひとつだったのかもしれません。また同時期から段々と、何かトラブルなどがあればさまざまな関係者から電話が来るようになり、私に現場の情報が集約されるように流れが変わってきました。建設現場には土木業者、設計業者、技術コンサルティング企業など、さまざまな企業が参加しているため、彼らの間に認識のズレが生まれるのは仕方のないことです。それでも、私という仲介役が軸となることで、建設作業が前に進んでいるのを実感していました。「現場が滞りなく進捗するように、人々をつなぎ、動かすこと」。そうした私たちの存在価値は見えづらいものですが、同時になくてはならないものだとこの案件を通じて学べたように思います。そして、投げ出さずにこの案件を続けられたことは、私にとって大切な強さの糧になりました。そして私自身だけでなく、双日マシナリーとしての価値を認めてもらう機会ともなり、実際にその後のプロジェクトのオファーなどにもつながっています。今回の成果をもとに、これまでに経験のない大規模案件にも参加できればと思っています。

COLUMN
時には、仕事を忘れて安らぐ

多忙な業務の合間にもプライベートの充実を大切にしています。たとえば、私は社会人になってからサックスを習い始めました。学生時代、吹奏楽部の友人に試しに吹かせてもらった時に、「初めてで吹けるのはすごいね」と言ってもらった記憶があったので、仕事終わりにレッスンに通ってみようと思ったのです。また、最近ではアザラシの可愛さに気づいて、休日に水族館を訪れることも楽しみのひとつです。責任の大きい仕事だからこそ、こうして緊張感を忘れて自然とリラックスできる瞬間はとても大切だと思っています。